ベーキングスタジオは、
これからの製パン・製菓に役立つ
情報とレシピを発信する場です。

米粉のパンづくりのコツ~小麦粉との併用またはバイタルグルテン使用の米粉パンの配合について~

  • 印刷する

パンや菓子作りに欠かせない原料である小麦粉。農林水産省によると、小麦粉の原料となる小麦の約85%は輸入に頼っています。2022年6月現在、小麦の国際価格は、アメリカでの不作や世界情勢の影響で高騰しています。日本でも小麦の値上げや、それに伴うパンや菓子の値上げも行われています。

そこで注目が集まっている人気の食材が米粉です。米粉とは、米を砕いて粉にしたもの。最近では、細かい粉状にする技術が進化して、製菓製パンに適した米粉が登場し、米粉パンや米粉菓子も作られるようになりました。

米粉を使用して作ったパンや菓子は「日本人になじみ深い米を使用している」「小麦のパンにはないもっちりとした食感や、米由来の甘みがある」などの良さがあります。その一方で、製造時は「うまく膨らまない」「吸水が難しい」、製品は「味が淡白」「すぐに老化してしまう」というような声もあります。

ミヨシ油脂のレシピ開発担当が、米粉を使用したパンの配合を検討する中で得たノウハウをもとに、「米粉パンを作りたい」方から寄せられた質問に答えます。全3回のシリーズのうち、今回は、小麦粉との併用またはバイタルグルテンを使用する米粉パンの配合・材料について、質問に答えます。

Q.粉類について

質問者様

粉類は米粉100%で、パンを作りたいと思っています。可能でしょうか?

可能ではあります。ただ、米粉は発酵耐性、ミキシング耐性ともに弱いため、プルマン型の食パンをはじめとしたボリュームのある製品を安定して製造することは、米粉100%では難しくなります。
強力粉を併用したり、バイタルグルテンを配合したりすることで発酵耐性、ミキシング耐性を補強し、安定した製品づくりができます。米粉のみで作るグルテンフリーパンの生地は液状のため、湿ったような重い食感になります。

ミヨシ油脂
ソフト開発課

※グルテンフリーの米粉パンについては別の回で紹介します。

Q.バイタルグルテンについて

質問者様

米粉のパンを作る際にバイタルグルテンは使用しなければいけないのでしょうか?
また、使用する場合の添加量などについても教えてください。

通常、強力粉にはグルテンを作るタンパク質が12~13%あります。米粉にはそれがないため、米粉のみでパン生地を作ろうとすると、ふっくらとしたパン製品の骨格となるグルテンが作られません。
米粉だけで小麦粉のパンと同じような製品を作るときは、米粉に対してバイタルグルテンを20%程度添加する必要があります。バイタルグルテンの添加量は米粉の配合比率によって異なります。詳しくは以下の計算式を参考にしてください。

ミヨシ油脂
ソフト開発課

【バイタルグルテンの添加量の計算式(参考)】米粉50%+小麦粉50%で作る場合

つまり、10%のバイタルグルテンが必要ということになります。
グルテンフリー製品を作る場合、バイタルグルテンは、もちろん必要ありません。

※バイタルグルテンとは?
小麦粉から小麦タンパクを抽出し乾燥させたもので、パン製品の骨格を作る目的で使用します。乾燥させているため、小麦粉中のグルテンに比べて吸水も多くなり、食感もかたくなります。最近では、乾燥前に酸性処理をして伸展性に特化させたもの、乾燥方法を変えて少量添加でも効果があるものなど、さまざまなバイタルグルテンが開発されているため、ご使用の場合は各メーカーへ使用方法等をお問い合わせください。

Q.吸水について

質問者様

米粉を使用するパンづくりで、吸水に関して注意することはありますか?

吸水量は、米粉の割合が多くなるにしたがって増えますが、原料となる米の収穫地や製粉方法によっても変わるため、事前のテーブルテストが必須となります。
米のでんぷんはかたく、製粉時にできる損傷でんぷんが小麦粉に比べて多いのが特徴です。損傷でんぷんはα化前に吸水するため、小麦粉のパンに比べて生地への吸水量は多くなります。

ミヨシ油脂
ソフト開発課

Q.油脂について

質問者様

練り込み油脂はどのようなものを使用すればいいですか?

米粉の主成分はでんぷんのため、米粉のパンはボリュームの少ない、かたくなりやすいパンになってしまいます。
でんぷんの老化は、酵素入りの練り込み油脂や乳化剤入りの練り込み油脂を使用することで抑制が可能で、焼成後の生地のパサつきを軽減できます。

ミヨシ油脂
ソフト開発課

米粉パンにおすすめの油脂

パールインショートニング

・米粉特有のでんぷんの老化抑制に効果を発揮します。
・無味無臭ですので、米粉の風味を損なうこともありません。

サクセフレッシュS/サクセフレッシュ

・微細な乳化構造と配合する複数の乳化剤と糖質の効果で、パンのパサつきを抑えてソフトにし、おいしさを保ちます。
・老化しやすいパンの口溶けを向上させ、パサつきを抑え、しっとり感を長続きさせます。

クラージュ

・しっとりソフトでありながら、歯切れ・口溶けの良いパンが作れます。
・パサつきやすいパンでもソフトさを持続し、つぶれにくく仕上がります。

Q.炊飯済の米を使用したパンについて

質問者様

炊飯済の米を使用したパンは、どのような特長があるのでしょうか?
また、炊飯済の米を使用したパンのレシピはありますか?

炊飯済米を使用したパンの特⾧は以下の通りです。
① α化した米を練り込むことで、パンに弾力が出ます。
② 白米を赤飯・黒米・発芽玄米など、特徴のあるものに変えることで、バラエティ化が容易にできます。
③ 食感には多少のもっちり感も出ます。

炊飯済米を使用したパンのレシピは以下からご確認ください。
炊飯済米はミキシングの最後に入れるのがポイントです。

ミヨシ油脂
ソフト開発課

白米入り食パン

炊飯した白米を20%、生地に練り込んだ食パンです。通常の食パンより、弾力があり、もっちりめの食感です。

黒米ともち麦のミニデニッシュブレッド

もち大麦粉と炊飯した黒米を生地に練り込んだ小ぶりなデニッシュブレッドです。黒米を使用することで見た目にもインパクトがあり、健康訴求もできます。

ベーキングスタジオでは、このほかにも米粉を使用したパンや菓子のレシピを多く紹介しています。
ミヨシ油脂レシピ開発担当者のノウハウが詰まっています。ぜひご活用ください。

米粉のパンづくりのコツシリーズはこちらからご覧ください

小麦粉との併用またはバイタルグルテンを
使用する米粉パンの製法について
グルテンフリーの米粉パンについて

お問い合わせを受け付けています

米粉を配合したパン・菓子づくりのご相談がある方は、こちらの問い合わせフォームに、ぜひお寄せください。

おすすめ記事

これからの製パン・製菓に役立つ情報とレシピ

BAKING STUDIO 記事一覧
MIYOSHI MIRAI PLATFORM

FOODS

  • NEXT FOOD LAB
  • BAKING STUDIO

CHEMICALS

  • NEXT CHEMICAL LAB