これからの介護食
みんなで楽しむおいしい食事
~プロローグ~
超高齢社会を迎え、今後ますます需要が高まるであろう「介護食」について、ミヨシ油脂はアンケート調査を実施しました。介護に携わる方々の声から真のニーズをとらえ、具体的な解決策を探るため、本連載では全5回にわたってアンケート結果の分析やそれに基づくレシピの提案などをお届けします。すでに介護食をビジネスで展開されている方はもちろん、これから商品の開発や企画を考えている企業の方など、ぜひご活用ください。
そもそも介護食とは?
介護食とはかむ力や飲み込む力が弱い方のために、やわらかさや飲み込みやすさを配慮した食事のこと。例えば、ペースト食やゼリー食など、市場ではすでに数多くの介護食が発売されています。
< アンケート調査概要 >
■ 調査対象:30歳以上の男女未既婚問わず、同居している身内に介助・介護が必要な人がいて、自身が介助・介護に関わっている方
■ 調査方法:インターネット調査
■ 調査期間:2022年5月23日~5月30日
■ 有効回答数:1,024
アンケート対象者1,024名のうち市販の介護食を利用したことがあると答えた280名に「市販介護食に対する要望」を聞いたところ、約33%(92人)が「品ぞろえを豊富にしてほしい」と回答しました。
また、被介護者の食事を手作りしている方848名に「手作りしてよかったと感じること」を聞いた質問では、約47%(399人)が「介助・介護が必要な方の好みを反映できる」と回答しました。下のグラフのように、アンケート対象者1,024名に行った「自分が介護食を食べるとしたら重視すること」という質問でも、約25%(252人)が「好きなものを食べること」と回答。介護食においても通常の食事同様にさまざまな選択肢から好きなものを選びたい、つまり「好きなものが食べたい」=エンジョイニーズがあることが分かります。
→①「好きなものが食べたい」=エンジョイニーズ
続いて「自分が介護食を食べるとしたら重視すること」を聞いたところ、約45%(459人)が「おいしさ」を要望していることがわかりました。また「栄養バランス」や「食べやすいこと」に次いで「好きなものを食べること」という意見も多く聞かれました。
市販の介護食を利用したことがある280名に「市販介護食に対する要望」を聞いたところ、約29%が「市販介護食の風味がおいしくなってほしい」と回答。これらのことから介護食において「おいしいものが食べたい」=おいしさニーズがあることもわかります。
→ ②「おいしいものが食べたい」=おいしさニーズ
さらに、介護が必要な方の食事に市販の総菜や加工食品を活用している858名に「市販総菜を提供する上で工夫していること」を聞いたところ、約24%(212人)が「できるだけ他の同居家族と同じメニューにする」と回答しました。他の質問の回答でも、同居家族と同じ内容の食事をとることに対して、価値を感じているととらえられる回答を選ぶ人が多くいました。
→ ③「みんなと同じものが食べたい」=みんなと食べるニーズ
このように、介護食においては大きく3つのニーズ(おいしさニーズ・エンジョイニーズ・みんなと食べるニーズ)があるのにもかかわらず、十分に応えられていないのが実情といえます。
私たちミヨシ油脂は「介護食についてのニーズは、決して介護食に限ったものではない」と考えています。介護食のようにソフトで飲み込みやすい食事を欲しているのは高齢者だけでなく、まだ硬いものがかめない子どもや、病気やけがでうまく食事ができない人も同じであり、みんなこのニーズを持っている。つまりこれらの課題に応えられれば、介護が必要な方はもちろん、さらに多くの人々を食で笑顔にできるはずです。
「みんなで楽しむおいしい食事」へのヒント
そこで、次回の記事では新横浜でフレンチレストラン「創作料理 Maison HANZOYA」を手がける加藤英二シェフに伺ったお話をお届けします。加藤シェフは「食事に対する制限や不便の有無によらず、食の楽しみを共感したい」という思いから嚥下(えんげ)食フレンチ「スラージュ」を開発。大きな注目を集めています。
実際にMaison HANZOYAで提供されるスラージュとは、どんな料理でどういった特徴があるのか。「みんなで楽しむおいしい食事」へのヒントとなれば幸いです。
次の記事:これからの介護食 みんなで楽しむおいしい食事 ~Maison HANZOYA加藤シェフインタビュー~
介護食開発セミナー公開中!
介護食開発者必見!開発のお悩みを解決する素材と応用例など、開発のヒントをご紹介しています。