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欧米でプラントベース食品の需要が拡大している9つの理由&世界的なトレンド状況まとめ

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2020年、第92回アカデミー賞授賞式は、映画作品でも受賞者でもない、いつもとは少し違ったことで話題になりました。それは「食事」。授賞式前や昼食会で提供されたのは、「100%ヴィーガンの料理」でした(※1)。この流れはアカデミー賞だけにとどまらず…

1月に開催されたゴールデン・グローブ賞でもヴィーガン料理が提供されたのです。
アカデミー主演男優賞に輝いたホアキン・フェニックスや今年(2020年)1月にグラミー賞で五冠を達成したビリー・アイリッシュもヴィーガンなのです。(※2 12頁

2020年は『ヴィーガン元年』と言われるほど、このライフスタイルが注目された年でした。そして、2022年。その勢いはとどまるどころか、より多くの支持を得ています。
欧米はフードテックやプラントベース食品の震源地と言われており、その流れは確実に日本にも輸入・定着されつつあります。今回は、その海外でのトレンド状況をリポートします。

欧米で年々需要が拡大するプラントベース食品

欧米のプラントベースフードは、年々需要が拡大しています。その市場規模は2020年度で前年度比28.5%増の「1兆2,735億円」となりました(※3)。
それに伴い、プラントベース食品の一部である代替肉・植物肉の市場も、2020年に86億米ドルの規模に達し、今後2021年から2026年の間に市場は約17%のCAGR(年平均成長率)で成長すると予想されています※4)。
なぜこんなに急成長しているのでしょうか。

欧米でプラントベース食品の需要が拡大している9つの理由

その理由は、

  1. 環境問題
  2. 食の多様性
  3. 動物愛護
  4. 健康志向
  5. セレブ、有名人
  6. Z世代
  7. メディア
  8. 新型コロナウイルス感染拡大
  9. ESG投資


など、複数の要素が絡み合い、それぞれが近年に活発化していることが影響しています。

①環境問題

畜産が、地球環境に大きな影響を与えていることが一般的に知られるようになってきました。工業型畜産が引き起こす問題として、地球温暖化や森林伐採をはじめとした数多くの深刻な影響が懸念されています。
このような背景から、動物性から植物性の食品を中心とした食生活へシフトする人が増加していると考えられます。

②食の多様性

ベジタリアン、ヴィーガンなどの菜食主義者の増加や、宗教による食事制限、食物アレルギーへの対応など、「食」にも多様性が求められる時代になりました(※5)。こうした人々にも受け入れられやすいのが、植物由来のプラントベース食品です。
さまざまな消費者からのニーズを受け、フードテック系ベンチャーや食品メーカーを中心としてプラントベース食品の企画・開発・販売が加速しています。

③動物愛護

動物福祉や動物保護への関心の高まりも、植物肉などの代替肉の需要を後押ししています。

PETA(動物愛護団体)などの動物愛護団体が、食肉消費のための動物の過剰な殺傷を減らすための啓発プログラムを導入していることも、製品需要を後押し(※4

事の発端は2022年から実施される、家畜に対する残酷な扱いを禁じたカリフォルニア州法、プロポジション12だ。この法律は豚を収容するおりの大きさを従来の1・3平方メートルから1・8平方メートルに引き上げることを義務付けており、条件を満たさない豚肉は来年以降、カリフォルニア州で販売できなくなる。
~2018年以降、12の州がカリフォルニアと類似の、家畜の成育環境を改善する条例を成立(※6

④健康志向

糖尿病と肥満は、現代アメリカの国民病と言われています。2015年時点で、人口の3分の1が糖尿病もしくはその予備軍(※7)、そして、2019年の米疾病対策センター(CDC)による調査では、成人の31.9%が「肥満」(※8)であるとわかっています。そこへ、糖尿病と肥満の人が重症化しやすい新型コロナウイルス感染症のパンデミックが到来。糖尿病や肥満は、より深刻なテーマになりました。
結果、世界的に健康志向が高まり、低エネルギー・低コレステロール・高タンパクが実現しやすいヘルシーなプラントベース食品の需要がこれまで以上に高まりをみせています。

⑤セレブ、有名人

上記の①~④の理由から、ベジタリアン・ヴィーガンになる有名人・セレブも急増しています。

●ポール・マッカートニーやマドンナ、キャメロン・ディアス~ブラッド・ピットもベジタリアン
●ビヨンセやアリアナ・グランデは植物性食品しか食べない究極のベジタリアンと言われるヴィーガン
●レオナルド・ディカプリオは~ヴィーガンブランドに巨額な投資
●ビル・ゲイツとツイッターを創設したエヴァン・ウィリアムズの共同出資会社が本物の畜肉と区別がつかないくらい美味しいベジ(植物性)ミートを開発
●時代の先端を行くセレブたちがヴィーガン食に投資する動機は、健康志向や食料・環境問題など、現代社会が抱える多様な問題と関係しています。(※2 14-17

⑥Z世代

①~④の理由、そして⑤からの影響もあり、Z世代にも菜食主義が増加しています。冒頭登場したヴィーガンのビリー・アイリッシュは、2001年生まれの20歳。まさしくこのZ世代のアイコンです。

さらに今後、代替肉市場をさらに成長させる追い風のひとつが、米国の「Z世代」という存在だ。1990年代後半~2010年ごろにかけて生まれた世代のことで、ネットリテラシーが高く、環境問題に強い関心があるとされる。
こうした次世代を担う若者たちは、畜産による環境負荷などの情報から、「従来の肉よりも、植物性の代替肉の方がクール」という考えを持ちやすいという。このため、Z世代が社会の中心になっていくにつれて、代替肉の市場もさらに拡大していくという見方がある。(※9 39頁

「特に若い世代にはかつてのヴィーガンへのネガティブなイメージは全くありません。むしろクールでファッショナブルなものなのです」(※10

⑦メディア

消費者の「食の安全」や「食と環境」に対する意識の高まりを受け、メディアでも「食」がテーマのドキュメンタリー映画・番組が製作され話題に。SNSでシェアされZ世代を中心に話題となっています。

「大きなインパクトを与えているのは、SNSでシェアされている家畜に関するビデオや、ネットフリックスなどで見られるドキュメンタリー映画だと思います。私たちが口にする肉がどれほどひどい状況で育てられているかが克明に描かれています。」(※11

日本でも、NetflixやAmazon Prime Videoなどの動画配信プラットフォームで、欧米で話題になった食に関するドキュメンタリー映画・番組が数多く配信されており、健康や環境への意識が高い層に人気です。

Cowspiracy:サステイナビリティ(持続可能性)の秘密(2014年)
What the Health:健康って何?(2017年)
ROTTEN 食品産業に潜む腐敗(2019年)
ゲームチェンジャー:スポーツ栄養学の真実(2018年)
フォークス・オーバー・ナイブズ-いのちを救う食卓革命(2011年)
フード・インク(2008年)

⑧新型コロナウイルス感染拡大

米国では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、海上運賃の上昇やコンテナ・トラック関連の労働者不足、畜産業での人手不足などの供給側の問題も起きています(※12)。その影響で肉の生産・流通が滞り、食肉の代替としての植物肉(プラントベースミート)の需要が高まっています。

新型コロナウイルスの感染拡大は、和牛と植物肉の双方で、それぞれ異なるかたちで認知度の向上と消費拡大をもたらした。他方、環境・動物倫理などに対する意識の高まりから、植物肉市場も急速に拡大している。
~植物肉市場は、こうしたプレーヤーに牽引されるかたちで急速に拡大し、市場規模は2020年に前年比約5割増となる14億ドルに達した。(※13

⑨ESG投資

ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。(※14
2020年の世界のESG投資総額は、全体で35兆3千億ドルに達し、2018年の総額からは15%、2016年の総額からは55%増加しました(※15)。

①の環境問題、②の食の多様性、③の動物愛護、⑧の新型コロナウイルス感染拡大などの問題は、どれも環境(E)や社会(S)と密接に関連しているため、ESG投資が増えればおのずとその解決につながるプラントベース食品の市場規模を後押しするかたちになっています。

プラントベース食品トレンドの世界的な動向

欧米だけでなく、世界全体に目を向けてみましょう。

機内食のヴィーガン対応は、すでに世界各国の多くの航空会社で実施されています。中でも、アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ航空はヴィーガン用の機内食メニューが充実していることで有名です。

エミレーツ航空の機内食は圧巻です。ベジタリアンやヴィーガンだけでなく、ニラやニンニクを含まないオリエンタル・ヴィーガンメニューにも対応(※2 17頁

また、植物肉以外のプラントベース食品も続々登場しています。植物性の卵、マヨネーズ、チーズ、ミルク、バターなどに加え、マグロやエビなどのシーフードに代わるものも世界中で数多く製品化されており、プラントベース食品はこれからまだまだ新しい可能性を切り開いていくと予想されます。

①欧米の動向

米国を中心にここ10年ほどで急成長してきた代替肉の2大スタートアップ企業、ビヨンドミートとインポッシブルフーズが、欧米の植物肉・代替肉の世界を牽引しています。

インポッシブルフーズの代替肉は、2019年から米国ハンバーガーチェーン第3位、バーガーキングのパテに採用されていることでも知られる(※9 42頁)。
代替肉市場の覇権をインポッシブルフーズと競い、同社に先駆けて上場を果たしたのが米国のビヨンドミートだ。~インポッシブルフーズと最も違うのは、より安全性を追求していることだ(※9 43頁)。
2013年に米国最大手の自然食品系スーパー、ホールフーズでの小売からスタートした。~より幅広い層へとターゲットを移し、大衆的なスーパーでの販売や、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドといったファーストフード店に供給するようになった(※9 44頁)。

②その他新興国の動向

インド、ブラジル、トルコなどの新興国でも、急速な都市化と消費者の生活水準の向上により、ヴィーガン食品などの高品質な食品に対する一人当たりの支出が増加しています。(※4

また中国では、政府の後押しもありさらにプラントベース食品の市場は広がりをみせています。

プラントベースフード(植物性食品)の開発と市場投入がアジア各国で広がっている。世界最多の人口を誇る中国では、政府が肉食の代替として植物性食品の摂取を奨励。年内にも米国に次ぐ世界第2位のプラントベースフード市場が誕生する見通しだ。(※17

プラントベース食品は一過性のブームではなく、これからますます世界的に需要を増やしていくことでしょう。日本でも、世界各国からの影響を受け需要と供給が高まっています。次回は、プラントベース食品の日本国内のトレンドについてお伝えする予定です。ぜひご覧ください。

なお、弊社ではこの世界・日本国内の流れをうけ、動物性原料を使わずに、植物性原料のみを使って“動物性油脂の特長を活かしたおいしさ”を創りだす新たな食用油脂ブランド「botanova」をご提供しています。「動物性油脂のおいしさを、プラントベースで創りだす。」という方針のもと、バターやラード、牛脂などの動物性油脂に含まれる香りの成分や風味のバランスを徹底的に分析し、新しいおいしさを創出しました。

プラントベースでの食品企画・開発の際には、ぜひご相談ください

無料サンプルや、さまざまなプラントベース食品に関するノウハウをご提供可能です。いつでもお気軽に、ご相談いただければ幸いです

出典

(※1)フロントロウ「アカデミー賞も「ヴィーガンフード」「プラスチックなし」、完全菜食が「温暖化」のために採用されるワケ」、2020年
(※2)垣本充・大谷 ゆみこ「完全菜食があなたと地球を救う ヴィーガン」、2020年
(※3)TPCマーケティングリサーチ株式会社「2021年 欧米のプラントベースフード市場について調査結果を発表 」、2021年
(※4)株式会社グローバルインフォメーション「植物肉市場、2021年から2026年にかけて約17%のCAGRで成長見込み」、2021年
(※5)ネクストフードラボ「プラントベースフード企画・開発の5つのメリット&デメリット」、2022年
(※6)株式会社全国新聞ネット「動物愛護「先進国」、来年の州法施行で食肉が消える? 斜陽化する米国の畜産業【世界から】」、2021年
(※7)糖尿病ネットワーク「米国の1億人超が糖尿病か予備群 人口の3分の1に糖尿病の脅威」2017年
(※8)DNPAO Data, Trends and Maps: Explore by Topic | CDC、2020年
(※9)石川伸一『「食」の未来で何が起きているのか〜 「フードテック」のすごい世界』、2021年
(※10)PRESIDENT Online「NYの若者がステーキをダサいと言う背景 肉を食べないのがクールでイケてる」、2019年
(※11)PRESIDENT Online「アメリカの若者が「肉食」を嫌がる切実な言い分 動物好きが牛を食べるなんて偽善だ」、2019年
(※12)小売・物流業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】「輸入牛の価格高騰、コロナ禍で起きている「ミートショック」の深層」、2022年
(※13) ジェトロ「和牛の消費トレンドと成長する植物肉産業の現状(米国) | 新型コロナ禍における北米地域の新たな消費トレンド」、2022年
(※14)経済産業省「ESG投資」、2022年
(※15)日本総研「2020年版世界のESG投資残高統計が公表 量と質の変化に注目」、2021年
(※16)日本食糧新聞「プラントベースフード、アジアで市場拡大」、2021年

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