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食品に油脂を入れるとどんな変化がある?
よくわかる油脂のはなし【プロローグ】

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コラム「よくわかる油脂のはなし」シリーズでは、100年以上油脂の力を生かしたものづくりを続けてきたミヨシ油脂が、全4回にわたって油脂についてわかりやすく解説します。ぜひ商品の開発や企画にお役立てください。
油脂について詳しく解説する前に、今回はプロローグとして油脂が食品に与える影響についてご紹介します。油脂が食品にとって欠かせない存在であることを知っていただけるとうれしいです。

1. 種類いろいろ!5種の油脂とその特徴

一口に「油脂」と言ってもその種類は豊富です。ここでは5種類の油脂をご紹介します。

油脂
バター

①バター

牛乳や生乳から得られたクリームを攪拌して脂肪粒を取り出し、固めて練り上げたもの。動物性油脂から作られていて、主成分は乳脂肪です。コクがあり、芳醇な香りが特長です。

マーガリン

②マーガリン

見た目はバターそっくりですが、原料が異なります。バターは牛乳のみから作られる一方で、マーガリンは植物性油脂(乳脂肪や動物性油脂を加える場合もあります)に、水と脱脂粉乳やクリームなどの乳製品、必要により乳化剤や食塩、香料、色素などの素材を組み合わせて作られたものです。なお、今回の検証では純植物性マーガリンを使用しました。

ショートニング

③ショートニング

水分や乳成分を含まず、ほぼ100%が油脂成分です。常温で固形のものが多く、無味無臭が特長です。菓子作りや揚げ油によく使われます。名前の由来はショートネスshortness(もろさ、砕けやすさ)で、由来の通りクッキーやパイに加えるとサクサク、ポロポロとした食感を出すことができます。

粉末油脂

④粉末油脂

粉末化した油脂は、主に「親油性タイプ」と「親水性タイプ」の2種類に分けられます。「親油性タイプ」は油脂そのものを粉末化します。一方で「親水性タイプ」は、乳タンパク質や糖質などで油脂を包み込み、粉末化します。油滴が非常に細かく、パン生地などに分散しやすいのが特長です。今回の検証では「親水性タイプ」を使用しました。

液状油

⑤液状油(サラダ油)

「液状油」は液体状の油脂で、冷蔵庫(5~6℃)でも固まりません。液状油の中でも「サラダ油」はJAS(日本農林規格)で精製度の高いものを指します。食用油として生でも食べることができ、マヨネーズやドレッシングにも使用されています。

2. 検証:油脂を使ってパンを焼いてみた

これらの油脂をパンに使ってみるとどうなるでしょう?実際に5種類の油脂を使い、同じ添加量でパンを焼いてみました。

①作業のしやすさ

まずはパン生地を作る際の作業のしやすさを比較しました。

材料を混ぜる際にポイントとなるのが、油脂を入れるタイミングです。マーガリン・ショートニングは他の材料をある程度混ぜてから加えるのに対して、粉末油脂・液状油は油脂を含むすべての材料を一度に混ぜ合わせる「オールインミックス法」で生地を作ります。

さらに、油脂の扱いやすさもポイントです。マーガリンはバターと比べ、使用に適した温度範囲が広いのが特長です。そのため、冷蔵庫から取り出した直後の冷たい状態でもやわらかく、夏場の暑い作業環境でもダレにくく扱いやすいです。また、粉末油脂は粉体なので計量がしやすいです。

②焼き上がりのボリューム

いよいよパンを焼いていきます!焼き上がりのボリュームを比べてみましょう。

※油脂の効果が分かりやすいように、油脂無添加のパンも焼きました。

油脂のパンへの効果

写真の左から順に、油脂無添加、液状油(サラダ油)、バター、マーガリン、ショートニング、粉末油脂を使って焼き上げました。

膨らみ具合を見ると、油脂無添加・液状油(サラダ油)の2種類は「低ボリューム群」、そのほか4種類の油脂を使ったものは「高ボリューム群」に分けられます。

油脂のパンへの効果

なぜこのようにボリュームの差が出るのでしょう?それは、パン生地の粘り気と弾力性を生み出す「グルテン」という物質が、使用した油によって変化するからです。パンにとって重要な「グルテン」について下記コラムでは詳しくご紹介しています。

なぜ油脂を変えるとパンのボリュームに差が出るのか?

ボリュームがあるパンを作るためには、伸展性の良いパン生地を作る必要があります。伸展性の良いパン生地を作るためには、パンの骨格となる伸展性の良いグルテンを作らなくてはなりません。

グルテンは小麦粉の中のタンパク質が水と合わさることで出来ます。こねたり引っ張ったりと力を加えることで、グルテンはどんどん網目状になり強くなっていきます。ただし、強いだけでは伸展性のあるグルテン膜を作ることはできません。

ある程度の強さになったら、網目状のグルテンの間に潤滑油の役割をする練り込み油脂を入れてあげることが大切です。

そうするとギシギシしていたグルテンは、だんだん細くしなやかになり、伸展性を持ち、やがて薄い膜を作るようになります。そこに熱が加わることで、グルテンはパンの骨格となり、ボリュームが決まってくるのです。

このとき、バターやマーガリン、ショートニングは、きれいにグルテンの網目に沿って伸びていきます。

しかし、サラダ油などの液状のものは、グルテンがある程度の強さになってからでは、滑ってしまい上手く潤滑油の役目をすることができません。そこで、パン生地を作る最初から入れるのですが、それでもやはり滑ってしまって、強くてしなやかなグルテンを作る邪魔をしてしまうのです。

一方、粉末油脂は、粒子がとても細かいので、最初から入れても滑り過ぎず、しなやかなグルテンを作る適度な潤滑油となることができます。

つまり、バターやマーガリン、ショートニングのような固形の油脂、そして粉末油脂こそが、ボリュームのあるパンを作る立役者になっているのです。

③パンの食感

次に、油脂によって食感がどのように変化したか見てみましょう。

●油脂無添加
油脂を加えたものに比べ、パンの内層が厚く、しっかりと食べ応えのある食感になります。

●マーガリン
内層は膜が薄く、きめ細やかに仕上がるためやわらかく、しっとりとした食感になります。

●バター
マーガリンと同じような食感になります。

●ショートニング
内層は膜が薄く、きめ細やかに仕上がるのでやわらかく、さっくりとした食感になります。

●粉末油脂
細かい油脂の粒子が分散しやすく、しなやかなグルテンによって、やわらかく軽い食感になります。

●液状油(サラダ油)
内層の膜は厚く、全体的にもっちりとした重い食感になります。

④パンの風味・香り

最後に、油脂によって焼き上がったパンの風味や香りがどのように異なるのか比べてみましょう。

●油脂無添加
小麦粉など素材の風味・香りが感じられます。

●マーガリン
使用するマーガリンの風味・香りが加わります。今回の検証では純植物性マーガリンを使用しましたが、乳製品や香料を配合したマーガリンは、それらの風味や香りが楽しめます。

●バター
バターの芳醇な風味・香りが特徴的です。

●ショートニング
ショートニングは乳製品や香料を配合していないため、小麦粉など素材の風味・香りが感じられます。

●粉末油脂
粉末油脂の効果によって小麦粉の風味が引き立ち、素材の風味・香りが感じられます。

●液状油(サラダ油)
パンのボリュームが出ないので内層が厚く、サラダ油独特の風味がパンの中にこもりやすくなります。そのため、使用した液状油の風味・香りが感じられます。

3. まとめ:油脂を変えれば美味しさも変わる!

今回は油脂を変えることでパンがどのように変化するのか検証してご紹介しました。油脂によって作業のしやすさやパンの焼き上がりが変わることがお分かりいただけたでしょうか。今回使用した油脂(マーガリンやショートニングなど)については、今後さらに詳しくご紹介する予定です。

油脂は、パンだけでなくさまざまな食品でも力を発揮します。今後もミヨシ油脂は油脂の魅力をお伝えしていきますので、お役立てください。

4. 次回予告:油脂のしくみ~そもそも油脂ってどんなもの?~

次回はそもそも油脂とはいったいどのようなものなのか、その仕組みを分かりやすく解説します。油脂の構造や形状、さらには「油脂」を表す言葉など、油脂に関するわかりやすい情報が盛りだくさんですので、ぜひ次回もご覧ください。

第1章の記事はこちら

第2章の記事はこちら

第3章の記事はこちら

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