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油脂のしくみ~そもそも油脂ってどんなもの?~
よくわかる油脂のはなし【第 1 章】

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コラム「よくわかる油脂のはなし」シリーズでは、100年以上油脂の力を生かしたものづくりを続けてきたミヨシ油脂が、全4回にわたって油脂についてわかりやすく解説します。ぜひ商品の開発や企画にお役立てください。
前回は食品に油脂を加えるとどのような変化があるかをご紹介しました。今回は、そんな油脂のしくみについて詳しくご説明します。化学が苦手な方もご安心ください!ゆっくり丁寧に解説しています。

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1.油脂って何?

皆さんは「あぶら」と聞いたとき、どんなものを思い浮かべますか?料理に使う菜種油、髪の毛や体に付けるオイル、自転車のチェーンに差すオイル、ガソリンなど、私たちの身の回りにはたくさんの「あぶら」があります。「油脂」は「あぶら」の一種です。では、「あぶら」と「油脂」はどのように異なるのでしょうか?詳しい定義を見ていきましょう。

①あぶら(油)
まずは、広義での「あぶら」についてご説明します。
あぶらは水に溶けない物質です。あぶらは何からとれるかによって分類でき、動植物由来のものと鉱物系のものに分けられます。

・動植物由来・・・「脂質」と呼びます。菜種油や大豆油、牛脂など。

・鉱物系・・・・ガソリン、灯油など。

②脂質
「脂質」とは、動植物由来の「あぶら」のことを指します。脂質には、コレステロールやロウをはじめとするさまざまな種類があり、油脂はその一種です。

③油脂
「油脂」はさらに「油」と「脂肪」に分けられます。常温で液体のものを「油」、固体のものを「脂肪」といいます。

油脂とは

2.なぜ液体と固体の油脂があるの?

では、なぜ油脂は常温のときに液体のものと固体のものがあるのでしょうか。それは、油脂によって「融点」が異なるためです。
「融点」とは、固体が液体に変わる温度のことを指します。たとえば、菜種油の融点は約-12~0℃であるのに対して、牛脂は約40~50℃と比較的高温です。常温のとき、2つの油脂がどのような状態になっているか比べると、融点の低い菜種油は液体ですが、融点の高い牛脂は固体であることが分かります。つまり、保管している温度よりも融点が低い油脂は液体に、融点が高い油脂は固体になるといえます。

油脂の融点と形状

3.油脂はどんな構造をしている?

次に、なぜ油脂によって「融点」が異なるのか見ていきましょう。「融点」の違いには、油脂を構成する物質の違いが大きく関わっています。まずは、油脂の構成物質と構造をご紹介します。

油脂とは、「グリセリン」と「脂肪酸」が結合してできる化合物です。これは、主に「トリアシルグリセロール」と呼ばれるもので、グリセリンに3つの脂肪酸が結合しています。それぞれどのような構造をしていて、どのように結合するのか、詳しく見ていきましょう。

①グリセリン
グリセリンは、ほかの物質と結合できる「官能基」を3つ持っており、「ヒドロキシ基」と呼ばれます。無色透明の液体で、粘性と吸湿性があり、なめると甘みがあります。

グリセリン

②脂肪酸
脂肪酸は、炭素(C)が鎖状につながってできた長い構造の片方の端に、「カルボキシ基」という官能基が1つあります。

脂肪酸

脂肪酸の官能基は1つだけですが、グリセリンの官能基は3つあるので、グリセリンに3つの脂肪酸が結合して「トリアシルグリセロール」になります。

トリアシルグリセロール

4.脂肪酸で変わる!油脂の性質

油脂の性質には、「脂肪酸」の違いが大きく関わっています。ここでは、脂肪酸における違いによって、油脂の性質がどのように変化するのかをご紹介します。

①炭素の数
脂肪酸を構成する炭素の数によって、油脂の「融点」が変わります。一般的に、炭素数が多いほど、脂肪酸の構造は長くなり、油脂の「融点」は高くなります。脂肪酸には、炭素が6個以下の短いものから、30にまでおよぶ非常に長いものまであり、それぞれ融点が異なります。

脂肪酸の長さと融点

②炭素の結合の仕方
炭素同士の結合の仕方は2種類あり、「単結合」と「二重結合」に分けられます。炭素は、他の元素とつながるための「手」を4つ持っています。炭素同士が1つずつ手をつないでいる状態を「単結合」、2つの手をつないでいる状態を「二重結合」といいます。

二重結合がない脂肪酸を「飽和脂肪酸」、二重結合があるものを「不飽和脂肪酸」と呼び、それぞれ立体的な形が異なります。飽和脂肪酸はまっすぐな鎖状ですが、不飽和脂肪酸は二重結合のところで折れ曲がっています。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

二重結合の数は、油脂の「融点」「酸化安定性(酸化のしにくさ)」に影響を与えます。二重結合の数が多いほど融点は低く、酸化しやすい油脂になります。反対に、二重結合の数が少ないほど融点は高く、酸化しにくい油脂になります。たとえば、イワシやマグロなどの魚油には、二重結合が多い「多価不飽和脂肪酸」が含まれます。そのため、融点がかなり低く、低温の海中でも魚の体内の油脂が固まることはありません。一方で、酸化しやすく風味の劣化が早いのも特徴です。魚油の「多価不飽和脂肪酸」は、コレステロールを下げるなどの健康効果がありますが、調理法を工夫することで酸化しやすさに対応することが求められます。

脂肪酸の二重結合

5.まとめ

今回は、油脂の定義やしくみについてご紹介しました。最後に内容を振り返ってみましょう。

「油脂」とは動植物由来のあぶらの一種で、常温のとき液体のものを「油」、固体のものを「脂肪」といいます。

油脂は「グリセリン」と「脂肪酸」から形成されており、「脂肪酸」の種類や構造によって、「融点」や「酸化安定性」などの油脂の性質が変わります。

6.次回予告:油脂はどうやって作る?

次回は、油脂は何からどのようにして作られるのか、原料や加工法についてご紹介します。油脂に関するわかりやすい情報が盛りだくさんですので、ぜひ次回もご覧ください。

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