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ベーカリー相談室
パンづくり

Q.フランスパンの裏に細かい穴ができたり、横に垂れて(広がって)仕上がってしまう。改善するには?

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◆ご相談内容

<ベーカリーを開業予定の方から、フランスパンについてのご相談>
フランスパンの裏側に、虫穴のような細かい穴ができてしまいます。また、焼成後の仕上がりが横に垂れて(広がって)しまいます。改善するにはどうしたら良いでしょうか。
配合や工程は以下の通りです。
*配合(液種法)
【本捏】粉60% 塩2% 生イースト1% 吸水35% 【液種】粉40% 吸水40% 生イースト0.2% 
*工程
ミキシング(縦型ミキサー)L2 M6 H1.5 / 捏上温度23.5℃ / 発酵時間(フロアタイム)60分 /
焼成(電気式スチーム機能付オーブン/アルタイト天板)上火240℃ 下火220℃ 14〜15分くらい

※回答について、シェフの皆さまからさまざまな要因をあげていただきました。
 該当する点から改良されますよう、お願いします。
 また、質問者の方の使用原料や工程・作業環境の詳細がわからなかったため、一般的な回答になります。

◆シェフのご回答

パン焼き小屋Zopf
伊原靖友
シェフ

冷蔵生地などと同じですが、生地が冷たいときは気泡が動きやすくなるため、底に穴が開きやすくなります。横に垂れてしまうのも同様の理由です。窯入れ前の生地温度を調整してみてはどうでしょうか。そして生地温度が低いのもあり発酵不足(熟成不足)で、生地が弱いのだと思います。通常だと、発酵途中でpHが下がり、生地がしまってくるはず。それが横に垂れてしまうのは、ミキシングが不足しているのか、発酵が不足していて生地が強くなっていないということが考えられます。ちなみに、吸水が高い場合も底に穴が開きやすくなりますが、この配合だと、高くないように感じました。
あとは、粉を変えて検証してみるのも有りだと思います。「リスドオル」などの一般的なフランスパン用粉で作ってみて、うまくいくのであれば、あきらかに材料が原因なので。問題がありそうなところを一個ずつ検証して潰していくしかないと思います。

パンで最も大切な、“味”についてはどうでしょうか?個人的に「見た目は悪いけどおいしい」というのであれば、改良はしなくても良いと考えます。見た目が悪く、味もイマイチであれば、改良が必要と思いますが。でも、自分のパンに気になる部分があるならば、そもそもの話になりますが、もう少し練習した方が良いと思います。下の穴など、あまり細かいことを気にせずに、食べておいしいのかどうかを第一に。練習を積んで、パンが良くなってくれば、気にされている外観の部分は自然と改善していくと思います。

ビーバーブレッド
割田健一
シェフ

直火で焼いているとは思いますが、底に穴があいたり横に垂れたりという現象は、ホイロをキャンバス布地の上で取らず、耐熱シートの上で取った場合に起きるものです。キャンバス布地でホイロを取り、焼く前に耐熱シートに移して焼けば、起きません。キャンバス布地でホイロを取る際には、折りひだを作りますが、その間隔を狭くし、横に広がらないようにするのがポイントになります。折りひだがない状態だと横に広がります。
またホイロの湿度も低めの環境がお勧めです。できない場合はラックタイムを取り、室温下で発酵を取るようにされた方が良いです。いただいた写真の印象からは発酵力が弱い、特にホイロの見極めが遅い印象を受けました。
横に垂れてしまう問題を改善するには、トータルの水が75%でやや高加水ともとれるので、水分量を少なくするか、75%のままであれば、バシナージュ(足し水)をされたほうが良いかと思います。2%ぐらいの水を取っておいて、ミキシングの最後に加えてL2分ぐらい混ぜた方が、自由水(遊離水)ができる分、気泡が荒めに出ます。
またノーパンチで60分のフロアタイムは短い印象があります。90分か60分→パンチ→30分くらいでも良いかと思われます。オーブンの火力をより強くするために、余熱の段階で下鉄板を空焼きし熱々にすることもおすすめです。
これ、という答えはないと思いますが、色々と試され、納得するパンに辿り着ければと思います。

ブーランジュリー
・オーヴェルニュ
井上克哉
シェフ

あくまで概念ですが、いただいた写真のパンは、フランスパンの概念で言うと当てはまってはいないと思います。
液種法で作られるのであれば、液種は30%くらいで抑えた方がブレは小さいと思います。
イーストについても、フランスパンの発酵曲線的にはインスタントイーストの方が向いています。インスタントイーストの場合は、液種0.1%、本捏0.4%くらいの量です。生イーストでも、できないわけではありませんが、技術的には難しくなります。
液種でどれぐらいの発酵を取っているかが分かりませんが、フロアタイムが短いです。50分→パンチ→50分くらいは取った方がいいと思います。
ミキシングも液種にしては短いので、Hをもう少し増やした方がいいと思います。成形の時に生地がしまっていないと、ホイロ後の生地がゆるみます。
焼成についても分割量などが分かりませんが、基本的に350gほどの生地量であれば、上火250℃ 下火200℃くらいで30分くらいは入ると思います。
以上を改善してもらえば、裏側に穴が開くようことは無くなると思います。

ブーランジェリー
・フリアンド
谷口佳典
シェフ

裏側に細かい穴ができてしまうのは、グルテンが弱い生地を焼いたときの特徴です。下火が足りていないので固まるのが遅く、穴が開いてしまいます。
対策としては、天板を抜いて直焼きする、吸水を減らす、フロアタイムの途中でパンチを入れるなどが考えられます。
焼き上がりが横に垂れてしまうのも上記と同じ原因なので対策をしてください。
写真を拝見しましたが、パンにボリュームやツヤがないように見受けられます。スチームが弱いと思うので、調整してみてください。また、全体的に過発酵だと思われます。発酵も調整してみてください。

森のベーカリー&カフェ
西山重明
シェフ

詳細な環境がわからないので一概には言えませんが、いただいた情報での回答は以下の通りです。
・天板で焼成しているのであれば、直焼きに変えるのが良いです。
・捏上温度が23.5℃と高いので、20℃以下にすると良いです。
・焼成時のスチームの量が多いので、減らすと良いです。
・生地の分割量が分かりませんが、焼成温度や時間が合っていないと思います。
・ホイロについての情報がないため仮説ですが、ホイロ時間と温度が不適格かもしれません。
・液種の発酵についての情報がないため仮説ですが、発酵不足かもしれません。

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