ネクストフードラボは、
これからの「食」を創る人のための
先端情報とレシピを発信する場です。

おいしいをつくるために。
知っておきたい!油脂の効果
〜パン編〜

  • 印刷する

油脂は食品のおいしさや食感を向上させる重要な素材、食品づくりに欠かせない存在です。今回は、油脂をパンづくりに用いた場合に、具体的にどのような効果が得られるのかを詳しく紹介します。これまでなんとなく使っていたという方も、その特徴や効果を知ることでよりおいしいパンをつくれるようになるはずです。

パンづくりでの油脂の主な効果は下記の4つ。

① パンのボリュームを出す
② 歯切れの良いパンにする
③ ソフトな食感にする
④ デニッシュの層をつくる

これらの効果は、油脂の中でも“可塑性”(かそせい)のある油脂を使用することで得られます。

ポイントその1:可塑性

可塑性とは物体に力を加えて変形させた後に、力を取り去っても変形が元に戻らない性質のこと。固形油脂のマーガリンやショートニングが可塑性油脂に該当します。

油脂の可塑性

ポイントその2:グルテンへの効果

可塑性油脂は、グルテンに対してその効果を発揮します。そもそもグルテンとは、小麦粉の中のタンパク質が水と合わさることでできる成分のこと。こねたり引っ張ったりと力を加えると、どんどん網目状になり弾性が強くなるのが特徴です。

マーガリンやショートニングなどの可塑性油脂を加えると、油脂が細かく分散し、ギシギシしていたグルテンはだんだん細くしなやかになり、伸展性を持ち、やがて薄い膜をつくります。そこに熱を加えるとグルテンは固まり、パンの骨格を形成。つまり、ここでパンのボリュームが決まってきます。

油脂のグルテンへの効果

このように可塑性油脂の添加によって伸展性の良いグルテンができ、生地中にグルテンの膜が薄く広がるため、パンのボリュームが出て、歯切れのよいやわらかいパンができます。その一方、油脂を入れない生地は、グルテンネットワークが太くて粗くなります。そのため、硬くボリュームのないパンとなります。なお、サラダ油など可塑性がない液状の油脂も、グルテン膜に油滴として存在するため、可塑性油脂のような役目を果たせません。

実際に、油脂の使用によってどのような違いが出るのか。下の画像は油脂無添加のパンと異なる3種類の油脂を使用してつくったパン(そのほかの条件は同じ)を並べたものです。

可塑性油脂のマーガリンやショートニングを使用したパンは、油脂無添加とサラダ油を使用したパンに比べてボリュームが出ているのがわかります。可塑性のない油脂であるサラダ油では、ほかの可塑性油脂と比べて、ボリュームが出ません。油脂無添加であればなおさらです。

使用する油脂によって異なるパンのボリューム

また、先ほども紹介したように、可塑性のある油脂を使用することで歯切れがよくなり、やわらかい食感になります。例えば油脂を使用せずつくられるフランスパンは硬く、かみ切るのに力が要りますが、マーガリンやショートニングの様な可塑性油脂を使用した食パンは、やわらかい食感で歯切れがよくなります。

パンに適した油脂のご紹介

ミヨシ油脂のマーガリン

【ミヨシ油脂のマーガリン】

パンや菓子、料理のプロの皆さまから長い間ご愛顧いただいているミヨシ油脂の業務用マーガリン。用途や使用量に応じてさまざまな商品をご用意しています。

各製品はサンプル請求受付中。その他、パン製造に関して、お気軽にお問い合わせください。

ポイントその3:ロールイン性

パンの中でも食感や見た目、製法に特徴のあるデニッシュ。あの細かい層は、可塑性油脂によって実現しています。ここでは、油脂の“ロールイン性”という性質が生かされています。

ロールイン性とは、生地に練りこまれずに薄い油脂層をつくる性質のこと。デニッシュやパイのようなペストリー生地をつくるのに重要です。そもそもペストリー生地は、生地と油脂を何層も折り重ねてつくられます。

パン生地を伸ばす様子
パン生地とロールイン油脂の図

このロールイン作業では、油脂に低温での伸展性や使用温度幅が広いこと、室温、作業温度での生地の硬さが求められます。

シーター(生地を薄く伸ばす製パン機械)によるロールインの様子を見てみましょう。ロールイン性に優れた油脂を使用すると、油脂が生地と一緒に引き伸ばされ、均一な油脂の層を形成します。

ロールイン油脂の伸展性

しかし、ロールイン性が不十分だと生地へのロールインの際に割れてしまい不均一な油脂層になる、または反対に生地に練り込まれてしまうといった問題により、きれいな層構造にならないケースがあります。ロールイン油脂と生地の伸展性のバランスが大切です。

シートマーガリンのご紹介

ミヨシ油脂のシートマーガリン

【ミヨシ油脂のシートマーガリン】

デニッシュやパイ生地への折り込み用として使いやすい、シートタイプの製品です。シートマーガリンを使用することで簡単にデニッシュをつくれます。

コラム:ドーナツをつくるときの油脂

ドーナツは油脂で揚げることでできあがります。ここでは、油脂の“熱媒体性”が生かされています。

熱媒体性とは

油脂は熱しやすく冷めやすく、加熱すると簡単に高温になるので、熱媒体としても優れています。比熱が水の半分程度と低く熱伝導率が高いため、食材を温めやすいという特徴もあります。

さらに煮る・茹でるのに比べてビタミンCの破壊が少ないのも油脂で揚げる魅力のひとつ。揚げ物は瞬時に水分を蒸発させるため、多孔質構造となり食感の良さも得られます。なおこういった効果は、可塑性の有無にかかわらず発揮されます。

ドーナツに適した油脂
ドーナツメートDX

おいしさにこだわった固形状フライオイルです。

ドーナツメートDXを使用することで油脂の染み出しを抑制し、おいしいドーナツをつくれます。

ドーナツにコーティングした砂糖の泣き比較

ドーナツをフライ後、砂糖をコーティングして30℃で1日保管した様子。弊社従来品では砂糖の泣き(※)が発生し、ベタつきが見られたのに対し、ドーナツメート DXでは油脂が染み出しにくいため、砂糖の泣きも抑えられました。
※油脂が染み出し、砂糖がべたつくこと

油脂でパンはもっとおいしくなる!

今回はパンづくりにおける油脂の役割と、それぞれに効果的な油脂の種類を紹介しました。おいしいパンづくりにおいて、油脂は重要な存在です。しかし、なんとなく使っているだけではその真価を発揮できません。ぜひ記事の内容を参考にしつつ、下記の製品一覧からあなたにぴったりの油脂を見つけてみてください。

  • 印刷する

おすすめ記事

これからの「食」を創る人のための先端情報とレシピ

NEXT FOOD LAB 記事一覧
MIYOSHI MIRAI PLATFORM

FOODS

  • NEXT FOOD LAB
  • BAKING STUDIO

CHEMICALS

  • NEXT CHEMICAL LAB