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「ショートニング」を徹底解説! トランス脂肪酸についても最新情報を

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ショートニングはパンや菓子に幅広く使われる油脂ですが、含有するトランス脂肪酸に不安を感じる人も多いのでは。今回はショートニングの特徴や役割、安全性についても徹底解説します!

パンや菓子をサクサク、ホロホロと軽やかな食感にできるショートニングはパンや菓子を作る職人の方には身近な存在だと思います。そもそもショートニングがなくてもパンや菓子を焼くことは可能です。それなのに日本では多くのシーンでショートニングが使われています。なぜショートニングが多く使われるのか? ショートニングに含まれるというトランス脂肪酸は日本人の健康面において心配はないのか?
今回はそんなショートニングの特徴や役割、安全面なども含めてあらためて解説いたします。

「ショートニング」って?

器に入ったショートニング

ショートニングとは、無味無臭の固形油脂のことです。
植物や動物の食用油脂を原料として、練り込み用の油脂として製造されており、元々はラードの代用品でした。現在では、精製した植物や動物の食用油脂に窒素ガスを混入した固体状のものだけでなく、利用シーンに合わせて液体状や流動状の製品が生産されています。

「ショートニング」という名称は、「サクサクさせる」とか「ポロポロにする」という意味の英語「shorten」から来ているそうです。
ちなみに「ショートケーキ」はショートニングを入れて焼いたケーキということから名付けられたケーキなのだとか。つまり最初は生クリームとイチゴをサクサクのビスケット生地で挟んだケーキだったのです。しかし、日本に入ってくるにあたってアレンジされて現在のふわふわなスポンジ生地が使用されるようになったといわれています。もしかすると今後「オリジナルショートケーキ」としてサクサクした食感を表現した本当の意味での“ショート”ケーキが流行することがあるかもしれません。

ショートニングのさまざまな用途

ショートニングは無味無臭という特徴があるため原材料の味や風味を損なうことなく口当たりをよくし、サクサクとした食感を付加できます。常温における伸びのよさ、生地への混ざりやすさに優れており、パンの生地に練り込むことでやわらかく、ふんわりしたパンになります。

クッキーやビスケットなどサクサクした菓子作りのときにも頻繁に利用されるほか、アイスを作るのに使うこともあります。また揚げ物用の油としても活躍しています。常温で固まる性質を生かしてカラッと仕上げ、揚げたてでも、冷めてもベタベタさせたくないベーカリーやファストフード店などで使われています。

ショートニングでパンやお菓子がおいしくなるヒミツ

いろいろなパン

日本ではパンを作るといったらショートニングなどの油脂を使うことが珍しくありませんが、油脂を加えなくてもパンを作ることはできます。実際、フランスパンやドイツパン、ベーグルなどは油脂を使わずに作られるケースが多いパンです。

しかし日本では、パンに何らかの油脂を使うことが多いです。ではどうして、日本のパンは油脂が使われることが多いのでしょうか。

その理由として考えられるのが「日本人はやわらかいパンを好むから」というものです。多くの人が「ふわふわでおいしい!」とか「外はサックリ、中はしっとり」といったパンの口コミやテレビ番組でのレポートを耳にしたことがあると思います。まさにショートニングで得られるような効果をポジティブにレポートしていることからも、日本人の好みとショートニングは相性がいいといえるのではないでしょうか。

ショートニングのような油脂を使うことで、小麦粉を練る際に作られる、タンパク質(グルテン)の膜の間に油脂が入り込み、パン生地がしなやかになります。そのほかにも具体的にショートニングを使ったときの効果を列記してみましょう。

・ふっくらと焼き上がる
・軽くてやわらかな口当たりになる
・パンの“耳”がやわらかくなるので切りやすい
・水分が逃げにくくなるためかたくなりにくい

どれもポジティブに受け止められる効果といえるのではないでしょうか。
パンや焼き菓子などの用途以外でも、揚げ油として使うとカラッと揚がりベタベタしないということを紹介しましたが、これにぴったりの菓子があります。それが日本でもおなじみの菓子である「ドーナツ」です。また、ファストフードに欠かせないフライドポテトをサクサクに揚げるためにもショートニングが使われています。揚げ油として使うショートニングは市販されている食用油と成分が異なるので、家庭で再現するのは難しいのですが、ドーナツもフライドポテトも身近な食べ物として多くの人に愛されています。

このように、ショートニングには食材の魅力を引き立てる役割があるといえるでしょう。

よく話題にあがる「トランス脂肪酸」って?

「ショートニングやマーガリンにはトランス脂肪酸が含まれている」という話を耳にしたことはありませんか。トランス脂肪酸というのは基本的にネガティブな文脈で取り上げられることがほとんどなので、それが含まれるショートニングやマーガリンを使用することについて健康面で心配される方も多いのではないでしょうか。

そもそも脂肪酸とは

脂肪酸とは脂肪を構成する要素です。現代人からは生活習慣病やメタボリックシンドロームなどと結び付けられ、何かと敬遠されがちな脂肪ですが、実は脂質も私たちが生きていく上で必要な栄養素のひとつです。
エネルギーになるのはもちろん、体温保持に使われたり、細胞を形成したりするほか、ビタミンの吸収を助ける、ホルモンバランスを整えるといった役割もあります。どれも健康維持に欠かせない重要な要素です。

トランス脂肪酸

脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸にはさらにシス型とトランス型がありますが、難しいことを抜きに説明すると、構成する原子の構造の違いによって名前が変わります。トランス脂肪酸というのは、不飽和脂肪酸のトランス型のものをいいます。自然界の多くの不飽和脂肪酸はシス型で、トランス型は油脂を加工・精製する過程でできるものがあるので「トランス脂肪酸=人工物」というイメージがついたのかもしれません。しかし、実は牛肉やバターなどの自然食品にもトランス脂肪酸は含まれています。

トランス脂肪酸は体に悪いの?

トランス脂肪酸を多くとりすぎている場合、少ない場合と比べて心臓病リスクが高まるといわれています。
実際、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)は、2003年にトランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも少なくするように勧告しています。ただし、国際機関が危惧しているのは主に欧米人の食生活をベースに考えられており、日本人の平均エネルギー摂取量から計算すると、1日のトランス脂肪酸の摂取量は約2g以下に抑えるべき、ということになります。これは生クリーム約1パック(200g)分に相当します。毎日生クリームを1パックとる日本人はそうそういないでしょう。極端な話、「トランス脂肪酸をたくさん摂取しよう」と考えない限り、危険な量のトランス脂肪酸を体に取り込むのは難しいといえるのではないでしょうか。日本人の通常の食生活をしていればとりすぎになる心配はないでしょう。
日本ではトランス脂肪酸の表示義務や濃度に関する基準値はありません。しかしこれは、そうした義務や基準値がなくても問題ないほど日本人にとってはリスクの低い成分だと考えることもできます。

現在の製品はトランス脂肪酸の量が大幅に低減されている

トースト

日本人のトランス脂肪酸の摂取量が問題ないということが分かっても、やはり心配という方もいらっしゃると思います。
しかし現在は各メーカーの企業努力によってトランス脂肪酸が低減された製品の開発がなされています。
現在の日本におけるショートニングやマーガリンは、トランス脂肪酸を大幅に低減しており、製品によってはバターよりも少ないというケースもあるほどです。実際、トランス脂肪酸の含有量を10分の1以下に減らした製品もあり「低トランス脂肪酸製品」は確実に増えているといえるでしょう。

質の高いショートニングを選んでパンや菓子をおいしく

ご紹介したように、トランス脂肪酸を抑えた製品が増えてきており、食の安全意識が高い方でもこれまでより気軽にショートニングを使用できる環境が整ってきています。
トランス脂肪酸には自然由来のもの、加工・精製由来のものといった多様な種類があります。そのどれが健康に影響を及ぼすのか十分な科学的情報はありません。農林水産省では、トランス脂肪酸という食品のなかの一成分についてのみ着目するのではなく、バランスの良い食事を推奨しています。実際、日本でも脂肪分の摂取量が増加傾向にあり、それに伴ってトランス脂肪酸の摂取量も増加する可能性は否定できません。
とはいえ、過度に一成分を忌避するよりも、安全性を理解したうえで質の高いショートニングを選び、おいしいパンや菓子を楽しんでいただきたいと思います。

▼ミヨシ油脂のショートニング製品はこちら

<参考・出典>
・農林水産省「ショートニングの日本農林規格(PDFファイル)」
・農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」

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