こだわり抜いた素材
「botanova 植物のおいしさ バター風味」 は、菓子を焼き上げた時に最大限のパフォーマンスになるよう、研究を重ねました。開発者が注目した素材とは?製品が完成するまでの秘話をご紹介します。
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プラントベースでバター風味のマーガリン
発酵バターの豊かな風味を目指して、開発中に作り続けた焼き菓子から見えてきたもの
植物由来の素材だけで作られたプラントベース油脂「botanova」(ボタノバ)。
「botanova 植物のおいしさ バター風味」は、数あるバターの中でも発酵バターの風味を目指して開発されました。
プラントベース食品に使うことで、爽やかな酸味がありながらも、甘み、うま味が凝縮し、複雑で豊かな風味を出すことができます。お菓子が焼き上がった時に最高のパフォーマンスになるように設計されたというのですが、いったいどのようにしてそれを実現したのでしょうか。今回は、この「botanova 植物のおいしさ バター風味」の開発経緯について、食品本部技術開発ID部の浜本一洋係長に話を聞きました。
発酵バターの風味を目指して開発がスタート
動物性原料を使わず植物由来の素材だけで、バター風味の油脂を作るーーー。
これはミヨシ油脂にとって、これまでにないチャレンジでした。普段、ミヨシ油脂で作られるマーガリンには、風味を出すためにバターや粉乳などの乳製品を入れています。しかし今回は、これらが使えないため、まったくゼロの状態から開発を始めなければなりませんでした。
「最初に、風味の方向性を決める必要がありました。バターには数多くの種類がありますが、その風味の分類として、通常のスイートバター、チーズ系バター、そして少し酸味のある発酵バターの3タイプに分けられると考えました。今回はその中でも、焼き菓子やクロワッサンを焼いたときに豊かな風味が出る発酵バター系を目指すと決め、素材選びを開始しました」と浜本係長。
開発陣は発酵バターの特徴として次の5つの要素があると考えました。
・甘み
・うま味
・味の厚み(油性感)
・味の後引き(持続性)
・香り
この5つの特徴を出せる素材であることが選定の基準となりました。最初に見出したのが、この甘みやうま味に相当する素材である「甘酒」です。
「甘酒にたどり着くまでが、本当に苦労しました。他にも100種類ぐらいの素材を試してみたと思います。この甘酒に柑橘系の風味を合わせ、全体の基本骨格としました。振り返ってみると、この決定までが一番大変なところでしたね」と浜本係長は語ります。
メイラード反応で生まれる風味を意識して香料を選定
次に進めていったのが、香料の選定です。いつもご協力いただいている香料メーカーと、さまざまな可能性を探っていきます。いつもなら、こちらから風味のイメージを伝えてそれに合った香料を提案してもらうのですが、今回は、成分を決め打ちして開発をお願いするという、ミヨシ油脂フルオーダーに近い形になったといいます。
「甘酒と柑橘系の基本が決まって、そこにどういう特徴を乗せていくかという試行錯誤を繰り返しました。使用する香料は天然由来の成分しか配合しないと決めていたため、使える素材がかなり限られてしまったのですが、その中でいかに風味を表現するかにこだわりました」と浜本係長。
特に強く意識したのは、菓子が焼き上がった時に最高のパフォーマンスになるように設計することでした。食品を加熱すると、食品中に含まれるアミノ化合物と糖分が熱とともに化学反応を起こし、また別の香気成分が生成される「メイラード反応」という現象が起きます。この時に、どのような風味が生まれるのかを意識しながら成分を配合していったといいます。
「この組み合わせの調整には、かなり時間がかかりました。実は、香料だけでは加熱すると香りが飛んでいってしまうので、香料だけでなく、糖質やタンパク質に注目し、呈味素材として入れています。すると、焼成中に反応し、また新しい香りが生まれる。これは、他にないコンセプトだと思います」と浜本係長は説明します。
ただ、成分の配合の良し悪しを確認するには、実際に焼き菓子を作ってみるしかありません。配合を調整しては、ひたすら焼き菓子を作り、その風味を確認するという気の遠くなるような作業を何度も繰り返しました。こうした工程を経て、ついに「botanova 植物のおいしさ バター風味」(以下、バター風味)は完成に至ります。爽やかな酸味がありながらも、甘み、うま味が凝縮し、複雑で豊かな風味を出すことに成功したのです。
さまざまな素材や用途に使えるように設計
この「バター風味」をベースにプラントベース食品を開発する際、他に合わせる素材としては、どのようなものが良いのでしょうか。浜本係長は次のようにアドバイスします。
「柑橘系が入っているので、フルーツと合わせるとすごく相性がいいと思います。あとはナッツにも合いますね。それから、プラントベースのレシピではチーズを使えませんが、火入りが進むほどチーズの風味が出てきます。焼けば焼くほどレアチーズケーキからベイクドチーズケーキになっていくようなイメージですね。そんな風味の変化も体験してもらいたいです」
また、実際のバターのような固形脂の物性にしたこともこだわった要素の一つです。
「普通のバターのように塗る用途や、ホイップしてケーキにデコレーションするクリームに使うなど、さまざまな機能を持たせられるような物性を意識して設計しました」と浜本係長。
提案のバリエーションを増やし、より多くのお客様に体験してもらいたい
約2年半の開発期間を経て、2020年9月に「バター風味」は発売されました。最近では、採用事例も増えてきています。「バターを使うとこってりしやすいクッキーも、botanovaだとさっぱり食べられてパクパクいけます、というお客さまの声をいただいています。重くなりすぎず、でもしっかり風味は出せるという点を評価いただいていると思います」と浜本係長は語ります。
今後、さらに「バター風味」の魅力を伝えていくためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
「私たちが提案できるアイテムを増やしていくことが大切だと考えています。焼き菓子はもちろんのこと、パンやホワイトソース、カスタードクリームなどでご利用いただくのもおすすめです」
例えば、小麦の一番外側の皮だけを挽いたふすま粉で作る「ふすまパン」は、栄養価も高く健康にも良いと言われていますが、独特な風味を気にされる方もいらっしゃいます。ふすまパンにbotanovaを合わせることで、よりおいしく食べられるようになります。また最近では、外食企業様への提案も増えてきており、「バター風味」の華やかな香りに高い評価をいただいています。
「こんな使い方もできます、あんな使い方もできます、というような提案のバリエーションを増やしていくことで、より多くのお客様に『バター風味』のおいしさを体験していただきたいですね」と浜本係長は意気込みを語りました。
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