世界が注目!需要拡大する「プラントベースフード」とは
植物由来の食品として注目のプラントベースフードについて、環境問題、SDGs、健康志向など多方面から紹介します。
近年注目されている食品にプラントベースフードというものがあります。植物由来ということは合わせて耳にしますが、具体的にどのような食べ物なのか、どうやって食べるのか、ベジタリアンとは違うのかなど、全体像は今一つはっきりしないという方もいらっしゃるかもしません。
本記事では、プラントベースフードとはどのような食べ物なのか環境保護やSDGs、健康志向などさまざまな視点で解説します。
「プラントベースフード」は地球にも体にも優しいフード・生活
プラントベースは、「プラント(plant)=植物」、「ベース(base)=土台、主成分」の英語を合わせた単語で日本語にすると「植物を主成分とした」「植物由来」という意味になります。プラントベースフードとは、植物由来の原材料を使って作る食べ物という意味で使われています。
プラントベースフードは、従来ある植物由来の食品のほか、植物性素材を使用しつつもあえて肉や卵、バター、チーズのような畜産物に似せて作られたものもあります。例えば「これまで肉を多くとっていた食生活から、植物由来の代替肉をとる食生活へ切り替える」などのニーズにも応え、結果的に食生活の植物由来の割合を高めることにつながります。
ただし、プラントベースフードを食生活に取り入れるということは、必ずしも「動物性食品を全てやめてプラントベースフードだけの食事に置き換える」ということではありません。一般的に、栄養バランスや嗜好などの理由で、畜産物や乳製品もほどよくとりながら、プラントベースフードを取り入れている方も多くいます。
日本人が食べたくなる「プラントベースフード」とは?独自調査の結果を公開中!
プラントベースフードが注目を集める背景
植物由来の健康的な食品として注目を集めるプラントベースフード。なぜそのような食生活が注目され、さまざまなメディアでおすすめとしてピックアップされているのか、その背景を解説します。
環境問題
私たち人類の生活は、地球にさまざまな影響を与えています。その中でも特に注目を集め、早急な対処が求められているものが「地球温暖化」です。
温暖化によって氷河の融解や海水面の上昇が観測されています。その結果、低地の水没や洪水被害の拡大が発生します。また植物の成育にも影響が発生しています。
温暖化の原因は、化石燃料の燃焼によるCO2(二酸化炭素)の排出量増加、森林伐採によるCO2吸収力の低下が大きな原因として取り上げられています。しかし、温暖化の原因となる温室効果ガスはCO2だけではありません。
牛のげっぷや家畜の排せつ物から排出されるメタンやN2O(一酸化二窒素)も要因の一つとなっています。品種改良や飼育環境の改善も研究されていますが、肉食を減らすことで温室効果ガスを減らそうという考え方もあります。
また牛肉1kgを生産するためには、トウモロコシ11kgが必要です。当然トウモロコシの耕作地や生産のための肥料や水も大量に必要になります。
このような背景から、環境問題解決のためにプラントベースフードが注目されています。
食の多様性・健康志向
世界には多数の宗教や民族の習慣があり、食文化も多様性に富んでいます。またベジタリアンやヴィーガンといった動物由来食品を口にしないという主義の人も増えています。
野菜中心のメニューは宗教、民族の禁忌に触れることが少なく、食文化の異なる人同士でも同じメニューで会食を楽しめます。
野菜の摂取は健康にもよい影響があります。野菜の割合を増やすことで、摂取するコレステロールやカロリーが少なくなります。また食物繊維の摂取量が増え、便通の改善も期待できます。野菜の割合を増やすことは、生活習慣病(糖尿病、動脈硬化)の予防や改善にもつながり、低カロリーの食事や便通の改善は美容やダイエット効果も期待できます。
動物愛護
一部の菜食主義者の中には肉食を全否定し、動物愛護を理由に、過激な行動にまで至ってしまうケースもあります。
野生動物の乱獲と畜産業を同レベルで扱うことはできません。野生動物の乱獲はぜいたくなファッションや食道楽、娯楽目的となっているケースも多く見られますが、畜産は人間の命をつなぐための手段です。一つの生命を食事としていただくという観点から、一食一食を大切にし無駄に廃棄をしないことが大切とする考え方もあります。また、廃棄を減らすことが畜産業の安定にもつながり、殺処分の大幅な削減など動物愛護の精神にもつながります。
必ずしも動物愛護の思いをもつ全ての人が動物由来の食品を一切とらないというわけではありませんが、このような考え方もあることから、「なるべく動物由来の食品をとりたくない、とる機会を減らしたい」という人にとっては、プラントベースフードで生産される代替肉などの製品が具体的な解決方法の一つになり得ます。
新型コロナウイルス感染拡大
2023年半ばの現在においていったん状況が落ち着きを見せている新型コロナウイルス感染症ですが、今後同様の災害に見舞われない保証はありません。大量の飼料、水、土地を必要とし、育成、出荷まで時間がかかる畜産業では緊急時の柔軟な対応が難しい場合もあります。
従来の畜産業とプラントベースフードを組み合わせることで、安定的な食事の提供が期待できます。
“サステナブルな食生活”って何?
プラントベースフードが注目されるようになった大きなきっかけに「SDGs」があります。
SDGsはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、エスディージーズと読みます。2015年の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの15年で達成する目標で、国連に加盟する193カ国が取り組みます。
世界にはさまざまな問題があります。その問題を一瞬でも達成できればよいと考えるのでなく、「持続可能な」ものとして達成しようとする点に大きな特徴があります。
SDGsは17の大きな目標とそれらを実現するための169の具体的なターゲットで構成されています。そしてプラントベースフードの活用が、17の目標の中のいくつかに寄与できるのではないかと考えられています。
17の目標の中で、プラントベースフードの普及が役立ちそうな項目を紹介しましょう。
※以下、頭の数字はSDGsの分類として振られている数字です。
2、飢餓をゼロに
プラントベースフードは植物由来の食品です。牛肉1kgの生産にトウモロコシ11kgが必要であると前項で述べました。肉食の割合の一部をプラントベースフードに置き換えることで、食料全体の生産量を増やすことができます。
3、すべての人に健康と福祉を
生活習慣病の予防に野菜を多く食べることが有効です。肉食の何割かをプラントベースフードに置き換えることで、糖尿病や動脈硬化などのリスク減少が期待できます。
6、安全な水とトイレを世界中に
畜産業の抱える課題の一つに家畜の排せつ物処理があります。そのまま河川や海に流してしまうと汚染水の元となり、疫病の原因となることもあります。
排せつ物の有毒性を薄めるなど手法の改善も重要ですが、肉食の割合の一部をプラントベースフードに置き換えることで汚染水を減らすこともできます。
9、産業と技術革新の基盤をつくろう
環境負荷の少ない畜産業への改革や代替肉などのプラントベースフードの開発、普及に取り組むことはSDGsのさまざまな課題解決に寄与する新産業となる可能性を秘めています。
12、つくる責任、つかう責任
環境汚染は工業や農業などの生産者だけに責任があるわけではありません。消費者もムダづかいや廃棄を減らすように心がけ、生産と消費のバランスを維持し続けなくてはなりません。
プラントベースフードという食品は、生産と消費の好循環をサポートしてくれる可能性があります。
13、気候変動に具体的な対策を
食肉の何%かをプラントベースフードに置き換えることで、メタンやN2Oの削減につながります。
15、陸の豊かさも守ろう
平均気温の上昇による生態系の変化や土地の砂漠化、放牧地確保のための森林伐採などで陸上の緑は急速に失われつつあります。多角的な解決への取り組みが必要です。他の項目で述べてきたようにプラントベースフードの普及は課題解決の一助となる可能性があります。
プラントベースフードを食生活に取り入れることで、私たちもSDGsの目標達成に寄与できます。
ただ、その食生活の切り替えが一時の流行では効果は得られません。SDGsは「持続可能な開発目標」です。それに貢献していこうとするならば、食生活も同様に持続可能(サステナブル)なものである必要があります。
「プラントベース」「ベジタリアン」「ヴィーガン」はそれぞれどう違う?
プラントベースフードは植物由来の食品を総称する言葉であり、「プラントベース」はプラントベースフードを積極的に食生活に取り入れるライフスタイルを指すこともある言葉です。
植物を食生活の中心に据えるライフスタイルには、ベジタリアンやヴィーガンという選択もあります。プラントベースフードの理解を深めるために、それぞれの定義を説明しましょう。
プラントベースフード
プラントベースフードは植物由来の食品です。サラダのような野菜そのものだけでなく、大豆や小麦などの植物性の素材を原料として、肉、チーズ、ミルク、卵のような動物由来食品に似せた食品もあります。
健康のために肉食を控えたい、宗教や文化的な背景のために食べられない食材の代わりにするなど、食生活の広がりと健康志向をサポートする食品です。
ベジタリアン
ベジタリアンは動物由来の食物の摂取に一部制限をかけた食生活をおくる人たちです。制限にはいろいろなパターンがあり、乳製品は食べてもよい、 乳製品と卵は食べてもよいなどのスタイルの違いがあります。
ヴィーガン
ヴィーガンは動物由来の食物は一切食べない、完全菜食主義者とも言われる人たちです。また食物だけでなく、動物から作られる商品を全て拒否しており、革製品などの衣服や小物も一切使用しない人もいます。
プラントベースフードの種類
フェイクミート(代替肉)
大豆、エンドウ豆、ジャガイモなどのタンパク質を原料とし、ハンバーグやソーセージなどの商品に使われます。
代表的なフェイクミートには大豆ミートやエンドウ豆ミートなどがあり、いずれもプラントベースフードの中でも代表的な一例として挙げられることが多い食品です。粒状のミンチタイプ、スライス肉のようなフィレタイプ、ブロックタイプなどが作られています。本物の肉に負けない食べ応えのある食感です。
植物性ミルク
大豆、オーツ麦やアーモンド、ココナツといった植物性原料から作られています。原材料によって風味や甘みが異なるので、目的に合わせて使い分けます。
プラントベースエッグ
緑豆、キャノーラ油、ターメリックなどから作られる植物由来の卵様食品(卵風の食品)です。日本では鶏卵がよく食べられているので、 プラントベースエッグはまだまだ普及していませんが、今後の注目が期待される食品です。
プラントベースフードを取り入れるときのチェックポイント
原材料をラベルなどでしっかりチェック
ハンバーグやソーセージなどの加工食品の場合、動物由来かプラントベースフードか見た目だけでは判別できないこともあります。パッケージのラベルや原材料表示を確認して購入しましょう。
栄養バランスをきちんと考える
健康な生活にはバランスのよい栄養摂取が不可欠です。植物を中心とした食生活でもほとんどの栄養をとれますが、ビタミンB12だけはとれません。ビタミンB12は肉や魚介類に含まれる栄養素です。肉、野菜、プラントベースフードをバランスよく摂取するのなら大丈夫ですが、ベジタリアンやヴィーガンのような食生活をおくるならサプリメントなどで補うとよいでしょう。
無理をしない
健康のためや、自身の主義や宗教などのためなど肉食を避ける理由は人それぞれでしょう。しかし、それが心理的な負担になると意味がありません。無理のない、継続可能な食生活をおくることが大切です。
日本人が食べたくなる「プラントベースフード」とは?独自調査の結果を公開中!
プラントベースフードの市場規模と今後の展望
ベジタリアンやヴィーガンといったライフスタイルは欧米に比べて日本ではまだごく一部でしか浸透していません。しかし、食の多様化や畜産に対する農作物の生産効率の高さ、環境への影響度合い、健康志向などの多くの要因が後押しをする形でプラントベースフード市場は右肩上がりの成長を続けています。
TPCマーケティングが2023年4月に発表した業務用プラントベースフードの市場規模では、前年比17.1%増の297.5億円と大きく伸びており、10年間で約2倍の規模になっています。
Plant Based Foods Association(PBFA)による世界全体での伸びも年12.2%の伸びと予測されており、2025年には740億ドルに達するという予測もあります。
これまでは代替肉が市場をけん引していましたが、その他のプラントベースフードの開発や普及によってさらなる飛躍が期待されています。
プラントベースフード取り組み事例
ミヨシ油脂のプラントベース油脂botanova
料理のうま味やコクに欠かせない動物性油脂ならではのおいしさを植物由来原料で作り出したのが、ミヨシ油脂の「botanova」です。
こちらは業務用製品なので小売りはしておりません。プラントベースフードの開発に取り組む企業の方にお試しいただきたい製品です。バター、ラード、牛脂、鶏油の4種の風味をラインアップしており、無料サンプルもご用意しています。(サンプル送付は食品関連の業務用のお客さまに限らせていただきます。)
著名人やメディアも注目のプラントベースフード
ベジタリアンやヴィーガンであることを公言している著名人は少なくありません。その影響を受けて、実際にそのようなライフスタイルに切り替えることにはさまざまな点で障害があります。食材の手配が難しいこと、栄養バランスを崩しやすいことが大きなハードルです。ハードルが高いほど継続は困難になります。
それよりは、無理のない範囲で植物由来食品を増やす方がストレスなく継続できます。プラントベースフードは健康的な食生活を目指す人、環境問題やSDGsに興味がある人にとっても、無理なく導入できる選択肢の一つとなっています。
日本人が食べたくなる「プラントベースフード」とは?独自調査の結果を公開中!
【出典】
・農林水産省「知ってる?日本の食料事情」
・外務省 JAPAN SDGs Action Platform「SDGsとは?」
・TPCマーケティングリサーチ株式会社「2023年 業務用プラントベースフード市場の動向と将来展望Ⅱ ーPBFの多様化が進み拡大が続く業務用市場ー」