これからの介護食
みんなで楽しむおいしい食事
~Maison HANZOYA加藤シェフインタビュー~
超高齢社会を迎え、今後ますます需要が高まるであろう「介護食」について、ミヨシ油脂はアンケート調査を実施しました。本連載では、そこで得られた介護に携わる方々の声から真のニーズをとらえ、その具体的な解決策を探ります。
連載2回目となる今回は、嚥下(えんげ)食フレンチ「スラージュ」を開発した加藤英二シェフにお話を伺いました。開発された思いやメニュー開発の工夫から、介護食の課題を解決するヒントを探ります。
Masion HANZOYA 加藤英二シェフ
神奈川県横浜市の閑静な住宅街にあるMaison HANZOYA(メゾン ハンゾウヤ)は、完全予約制のレストラン。ヨーロッパの邸宅のようなステキな空間で、加藤英二オーナーシェフが織りなす、旬の食材を生かしたフレンチ創作料理の数々を楽しめます。
スラージュとは
Maison HANZOYAの加藤英二シェフが開発した嚥下食フレンチ。障がいの有無によらず食べられて、食の楽しみを共感し合えるのが大きな特徴です。
実際にスラージュを食べた感想は?
実際にミヨシ油脂のメンバーがMaison HANZOYAでスラージュを食べてみました。
ほぼかんでないけど満たされた。おなかもいっぱいになった
嚥下食と知らずに出されても全く違和感がないと思う。とてもおいしくいただけた
ミキサー食のように均質ではないことによって、食べるたびに風味に変化があり、食べるのが楽しく、おいしかった
火入れ方法の工夫で柔らかくしっとりして食べやすい食事を作れること、かまなくてもおいしい食事はあることを知れた
一品一品丁寧につくられた料理は、どれも見た目も味もおいしく、通常のフレンチとしてもとても満足できる内容でした。Maison HANZOYAでは嚥下障害のある方だけでなく、訪れた方々みんなで同じメニュー(スラージュ)を楽しまれるケースも多いそうです。
ここからは、加藤シェフに伺った「スラージュをつくるうえでの工夫のポイント」を紹介します。
ポイント 1「五感で楽しめる」
嚥下食フレンチ「スラージュ」を提供するにあたり、Maison HANZOYAの加藤英二シェフはさまざまな工夫を凝らしています。その一つが「五感で楽しめる」ようにすること。料理だけでなく、使用するカトラリーや店内に飾る花、絵、照明にまで心を配っています。
また料理についてもただ単に食感をやわらかくするのではなく、調理を工夫し、やわらかい中にもいろいろな食感を表現。食感の変化を楽しめるようにしています。
ポイント 2「特別視する名前は付けない」
メニュー名も工夫のポイント。「介護フレンチ」などといった嚥下食として特別視する名称ではなく、障がいの有無にかかわらず、誰もが選べるように「スラージュ」と命名。フランス語で「ホッとする」「優しい」、ヒンドゥー語では「太陽」といった意味があるそうです。
メニューを選ぶ当事者や家族、提供する側が身構えることなく気負わずに選べる雰囲気づくりにつながっています。
ポイント3「食感を考慮して食材を選ぶ」
食材選びにもいろいろな工夫が。例えば魚の場合、できるだけ繊維が緻密なものが適しており、その中でもアマダイやメバル、マスは季節に左右されず良質だそう。
野菜の場合はホワイトアスパラガスや百合根(ゆりね)、じゃがいも、さつまいもなど。食感がやわらかいので、できるだけ小さいうちに収穫したものを使用しています。
ポイント4「香りの表現にも心を配る」
また、嚥下食では香りも重要な要素。嚥下障がいのある方は味覚も衰えている傾向がありますが、これまでいろいろと試したところ、香りに対する反応が一番よかったとのこと。
香りの表現で楽しめるのは健常者も同じ。糖分や塩分が控えめでも香りがあればおいしく感じるのもポイントだそうです。
このようにスラージュを提供するにあたり、加藤シェフはさまざまな工夫をしており、日々改良を重ねています。
お話を伺っていて印象的だったのは
「介護食は誰かの特別な食事ではなく、楽しめる食事であるといいと思う」
「健常者が食べたいと思わないものは、被介護者も食べたいとは思わないものです」
「介護食をマイナスなイメージではなくて、みんなで“いいね!”と思えるものにしていくことが重要」
という加藤シェフの言葉。
これまで私たちは介護食を健常者の食事とは分けて、その中でどうすべきかを考えがちだっただけに、多くの気づきや学びを得られました。
次回以降はアンケート調査から得られた、介護食における3つのニーズ(おいしさニーズ・エンジョイニーズ・みんなと食べるニーズ)をさらに深掘り。オススメのレシピとともに紹介します。「みんなで楽しむおいしい食事」を実現するために。ぜひ参考にしていただけると幸いです。
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